私がペットフード工場で二ヶ月間ほど働いたのは十八歳の頃のことでした。
大学の進学に際して、ちょっとした小金が欲しかったのです。
大学のコンパ、もしくはサークル活動の資金のためと、私は工場長おじさんの面接を受けました。
面接は一言二言世間話をしただけで合格でした。
春の桜の花びらが降りそそぐなか、私は工場に向かうバスに乗り込んで職場に向かいました。
バスには様々な人がいました。
私のような若輩者もいれば、中年の男性、二十代の可愛い女性、果ては老人と、
それ皆がバイトや派遣さんと知ったのはすぐ後のことです。
職場に着き、白い防菌の作業着に着替えてすぐに点呼が始まりました。
そこで驚いたのは、面接ではあれほど優しかった工場長が鬼のように厳しかったこと。
自分が怒られたわけではありません、
工場長は二分ほど遅刻してきた正社員に厳しい言葉を吐きかけていました。
私はその時、世間、社会、仕事の厳しさを初めて垣間見ました。
仕事は正直、かなり単調なものでした。
機械にペットフードの材料を流し込むだけ、それだけです。
恐ろしく時間の経過が遅く感じました。
給料はそれなりに良かったですが、
いま同じバイトをしろと言われたら、正直無理だと思います。